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睡眠データの活用というと、つい不眠や断眠といった睡眠障害の傾向がある方に注目してしまいがちです。
しかし、今回ご協力いただいたご施設では、視点を変え、「入眠前の特定のアクティビティがご入居者の睡眠の質にどう影響するか」を検証するためにデータを活用しました。
このような効果検証に取り組む際、具体的にどのようなデータが利用できるのか、どのように分析を進められるのかを、本事例と共にご紹介します。
1. 目的と背景:なぜ「入眠前アクティビティ」と「睡眠データ」なのか?💡
1-1. 検証の目的
この活動の効果検証の目的は、入眠前のアクティビティ(ナイトアクティビティ)の実施がご入居者の睡眠の質向上に寄与しているかを明らかにすることです。
1-2. 活動の背景:睡眠の「質」に着目
「量より質」の重要性
高齢者にとって、睡眠はただ時間を確保するのでなく「質」が重要です。
短時間睡眠(7時間未満)や長時間睡眠(9時間以上)はアルツハイマー病の発症リスクや死亡リスクを増加させることが報告されています。※1
※1【出典:厚生労働省 健康作りのための睡眠ガイド2023 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf 】
開始前の課題
ご入居者の現状として、就寝時間が早く、長時間の臥床により睡眠の質が低下しているという課題がありました。
目指す方向性
長時間の臥床で低下した睡眠の質を改善し、本来の生活リズムの再獲得を目指す第一歩として、ナイトアクティビティを実施。
2. 実施内容と検証のための準備 📅
2-1. アクティビティの概要
内容:夕食後のアクティビティ
時間:19:30~20:30
対象者:移動が自立している方、参加希望者。
環境整備:照明を落としスポットライトを使用し、ライトがご入居者に直接当たらないよう調整。
毎回実施前に目的の説明と入眠に対する仕組みの確認。
BGMに「シンギングボウルの共鳴」や「愛の周波数528Hz」など、自律神経系を
整える作用のある音楽を使用。
途中の休憩時にカモミールティーなどのノンカフェインの飲み物を提供。
位置づけ:一部の方のためでなく、施設全体の取り組みとして位置づけ、より多くのご入居者が参加しやすい環境を構築。
【ナイトアクティビティ予定表】

2-2. 検証の仮説
ライフリズムナビのデータを活用し、以下の2点を検証しました。
【仮説①:ナイトアクティビティの効果判定】
- ナイトアクティビティ実施により、「参加者」の睡眠時間は減少するが、疲労回復度や快眠指数の点数は向上する。
- 「参加者」は「非参加者」と比較し、睡眠の質は向上する。
【仮説②:特定アクティビティの効果測定】
- ナイトヨガは、特に睡眠の質の向上に寄与している。
3. ライフリズムナビを用いた効果検証事例 📊
ここでは、具体的なご入居者の睡眠データを※サマリー機能を使い比較し、仮説①を検証します。
※サマリー機能については、こちらで詳しく説明しています。

3-1. 【事例①】ナイトアクティビティ参加者の場合
2024年10月1日〜10月30日と2025年6月1日〜6月30日で比較します。
見るポイントは右側の赤枠内です。
対象の期間を見比べると、睡眠時間は3時間25分も減少していることが分かります。
しかし、疲労回復度や平均快眠指数はいずれもポイントUPしました。

さらにこちらのご施設では1年間のデータをまとめ、以下のようなグラフを作成して
よりデータを比較しやすいように工夫されておりました。

👉 結果:睡眠時間は減少しても、※ライフリズムナビスコア(疲労回復度・快眠指数)が上昇しており、仮説通り「参加者の睡眠時間は減少するが、疲労回復度や快眠指数の点数は向上する」ことが示されました。
※ライフリズムナビスコアとは?
以下リンク「ライフリズムスコアの見方を習得する」をご参照ください。

3-2. 【事例②】ナイトアクティビティ非参加者の場合

👉 結果:参加していない方は、睡眠時間は長くなったにも関わらず、ライフリズムナビスコアは減少しており、参加者との間で明確な差が確認されました。
これにより、ナイトアクティビティがご入居者の睡眠の質向上に効果をもたらしている可能性が示されています。
3-3. 仮説②:特定アクティビティ(ナイトヨガ)の効果検証
さらに、この施設では特定アクティビティの効果検証のため、「ナイトヨガ実施日のライフリズムナビスコア」と「1か月のライフリズムナビスコアの平均値」を比較しました。

★この比較により、ナイトヨガという特定のアクティビティが、他の日に比べてより高い睡眠スコアに結びついているかを定量的に評価できます。
💡アクティビティを実施した日と、していない日を比較するには?
サマリー機能で絞り込みの日付を同日にすることでその日の情報を抽出できます。

こちらのご施設では以下のような表にライフリズムナビスコアをまとめて評価されていました。

※介入日平均=7月1日以前の直近参加10回分の平均
★ナイトヨガが睡眠の質に良い影響を与えている可能性があると評価できます。
まとめ:データで見るナイトアクティビティの効果
今回の事例では、「睡眠の質」に焦点を当て、入眠前のアクティビティがどのように影響するかをデータで検証するという新たな取り組みが行われました。
その結果、ナイトアクティビティに参加したご入居者では、睡眠時間が短くなってもライフリズムナビスコアが上昇したことが確認されました。
一方、非参加者では睡眠時間が長くてもスコアが低下しており、「ただ眠る時間を確保するだけではなく、入眠前の過ごし方が質を左右する」ことが明らかになりました。
このように、ライフリズムナビのデータを活用することで、アクティビティの効果を客観的に評価し、より良い生活リズムづくりへとつなげていくことができます。
ぜひ皆さまのご施設でも、ライフリズムナビのデータを活用し、日々の取り組みやアクティビティがご入居者の生活にどのような効果をもたらしているのか、効果検証にチャレンジしてみてください!

