転倒・転落事故防止編

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このタイガーロールでは、ライフリズムナビを活用した転倒・転落事故防止についてご説明します。

このページに書かれているステップに沿ってライフリズムナビの活用方法を習得し、生活リズムを把握したケアを行うことで、事故を未然に防ぐ可能性を高めることができ、事故防止にお役立ていただけます。
ここでは、事故の未然防止を行うにあたってのポイントやライフリズムナビの機能をまとめています。まずは本パートに目を通したあとで、データを活用した事故防止に挑戦してみてください。

発生頻度の低減や事故発生時の早期発見も含め、ご入居者やスタッフにおいてより望ましい状況を保つことを広い意味で「事故防止」と呼称しております。

目次

基本的な考え方

防ぐべき事故を明確にしましょう

転倒は「老年症候群(=疾患)」と言われている。
転倒は、病気であり事故ではない。

『高齢者の転倒予防ガイドライン』より

事故防止対策におけるライフリズムナビの最大のメリットは「事故の早期発見が可能」であること、事故分析の際に実データに基づいた振り返りが可能であることにあります(例:実際にベッドにいた時間、離床した時間がわかる)。転倒の未然防止策を最大メリットとすることは推奨しておりません。(そもそも通知が来ても、別のケアをしていたら駆けつけることは不可能です。)ただし、導入以前に比べると、防止策としても活用することが可能です。

全ての転倒事故は防げない
   ↓
転倒事故はゼロにならない
   ↓
防ぐべき事故を確実に減らしていく

というマインドセットが重要です。

防ぐべき事故を減らすためのツールとして、ライフリズムナビをご活用ください。

【どんな対策を講じてても防げない事故】

例)ご入居者の普段とは異なる突発的な行動による事故 
  付き添い歩行をしている際の急な膝折れによる事故

このような事例についてはご入居者の状態やリスクに関して、ご家族への事前説明を行い施設とご家族双方で理解の共通化をしておく必要があります。

【防ぐべき事故】
やるべきことをきちんと実行すれば防げる事故を指します。

やるべきことを実行していない例)
・繰り返し転倒を起こす方への対策を怠り発生する転倒事故
・未然の事故防止策(環境整備等)をとっていない
・職員のルール違反によるもの
※ご入居者の状況やADL、生活状況により対策、環境整備の内容は変わります。

生活リズムを把握し、睡眠リズム(生活課題)の改善から事故防止を図る

まずは、ライフリズムナビデータと介護記録からご入居者の生活リズムを把握しましょう。その上で、睡眠リズムに課題がある場合はケア内容を変更し課題を解決することで、事故防止を図ることができます。フットセンサーのような事故の「直前防止策」ではなく、生活リズムを把握し生活課題の改善による「未然防止策」を検討していきましょう。

ライフリズムマネジメントによる事故防止サイクル

アセスメントから、生活課題を把握して課題の改善により、事故を防止していきましょう。

頻尿、昼夜逆転、断眠の改善から事故防止につなげる

具体的な事例から学んでいきましょう。

【事例① 頻尿の方の事例】
[対象者の状況]
夜間、頻尿で1時間に一度のペースでトイレに行っていた。
睡眠時間が少なく下肢筋力低下もあり、ふらつきや転倒されることがしばしばあった。

[アプローチ内容]
頻尿の原因について医療職も含め検討し、服薬内容、水分量の把握を行った。
ケア内容を変更し服薬調整を行ったところ、夜間トイレに行く回数が減った。
トイレの回数が減ったことで転倒リスクも減り、事故防止につながった。

【事例② 昼夜逆転の方の事例】
[対象者の状況]
夜間眠れず、日中に食堂で傾眠していることが多い。歩行時にふらつきがあり転倒することがある。

[アプローチ内容]
生活リズムをデータで確認する。日中のレクリエーションやリハビリへの参加により、活動量を増やした。夜間睡眠リズムが改善され、睡眠時間が確保できるようになり、日中の歩行も安定し、ふらつきが無くなり転倒の頻度が減り、事故防止に繋がった。

【事例③ 断眠傾向の方の事例】
[対象者の状況]
下肢筋力が低下傾向にあり、睡眠が断眠傾向で数時間毎に起きている。夜間に起きた時に独歩による転倒リスクが高いことからその都度職員が介入しているが、他者の介助中などで、介入が間に合わず転倒することがしばしばある。

[アプローチ内容]
睡眠データを確認し、断眠の理由を検討する。
全身にかゆみがあり、かゆみから断眠に繋がっているのではと仮説を立てる。
ケア内容を変更し、軟膏の塗布、服薬調整をしたところ、数時間毎に起きることが減り、断眠が改善する。夜間に起きることが減り、事故防止に繋がった。

事故の早期発見のためのアラート

ライフリズムナビのアラート機能を転倒防止「目的」として使用するとデメリットがあります。

  • 「念のためのアラート設定」が不要なアラートにつながり、過度なアラートによりご入居者・職員双方にとって落ち着かない環境になる。
  • アラート確認、既読、状況確認などでスタッフの負担が大きくなる。
  • ご家族が過度な期待をしてしまう。

デメリットを理解した上で、必要最低限の設定で生活リズム把握のためのアラートとして活用していきましょう。

離床アラート

お知らせのタイミング

ベッドから起き上がり、離床したタイミングでお知らせします。

使用場面

ベッドからの立ち上がりや、その後の歩行に介助が必要な場合などにご使用下さい。

体動継続アラート

お知らせのタイミング

睡眠状態になった後に、ベッド上で体の動きが大きくなった場合にお知らせします。

使用場面

ベッドから起き上がる前兆と考えられます。
ベッドからの立ち上がりや、その後の歩行に介助が必要な場合などにご使用下さい。

事故カンファレンスでの活用

事故が発生した後のカンファレンスの際にもライフリズムナビデータを活用することができます。
事故原因の検討の際に、睡眠データから転倒に関係する傾向(睡眠状況、排泄、昼夜逆転等)はないかなどを分析して、事故防止対策を決定していきましょう。

他施設のライフリズムナビを活用したカンファレンスの様子

職員への周知、情報共有、ルールの徹底

事故防止対策を決定したら職員へ周知、情報共有、対応ルール(イベント入力機能の活用、データの定期的な確認)の徹底をしていきましょう。

ライフリズムナビデータを活用することで、事故防止を図ることができるので、ぜひご活用ください。

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