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本タイガーロールでは、約24時間周期で変動する生体リズム(サーカディアンリズム)について解説し、高齢者ケアにおける活用の可能性についてご紹介します。サーカディアンリズムは、睡眠や代謝などの生理的機能に影響を与えることが知られています。この情報を参考に、日常のケアの一助としてご活用ください。

サーカディアンリズムとは?
サーカディアンリズムは、体内時計が調整する約24時間の周期を持つ生体リズムです。※1
光や温度、社会的活動などの外部要因(時間情報等)の影響を受けると言われています。体内時計が関与すると考えられている主な生理的機能には、以下のようなものがあります。※2
- 睡眠と覚醒のリズム
- 体温の変動(昼間に高く、夜間に低くなる)
- ホルモン分泌(メラトニンやコルチゾールなど)※3
- 代謝活動
※1 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット 体内時計
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-039
※2 国立精神・神経医療研究センター 眠り、リズムと健康②
https://www.ncnp.go.jp/hospital/sleep-column6.html
※3 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット メラトニン
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-062
高齢者の体内時計の変化
年齢を重ねることで、体内時計の調整能力に変化が生じると言われています。
- メラトニン分泌量の変化:夜間の睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が低下しやすくなることが報告されています。
- リズムの前倒し:睡眠時間が前倒しになる傾向がみられ、夕方や早朝に眠気を感じることがあるとされています。
- 覚醒の断続化:加齢とともに睡眠が浅くなり、夜間に目覚める回数が増加する傾向にあるとされています。
- 外部刺激への感受性の変化:光や社会的活動といった外的要因への反応が変化し、リズムの変動が大きくなる場合があります。
サーカディアンリズムの変化が考えられる影響
1. 健康への影響
- 睡眠リズムの変化:入眠困難、昼夜逆転、断続的な睡眠などの変化がみられる場合があります。
- 身体機能の変化:代謝機能や免疫機能への影響が指摘されています。
- 認知機能への影響の可能性:サーカディアンリズムの変動が認知機能に関連する可能性が示唆されています。
- 精神的ストレスの増加:リズムの変化が心理的ストレスに影響する場合があります。
2. 生活の質(QOL)への影響
- 昼間の活動量が減少し、社会的交流が減る可能性があります。
- 生活リズムの変化が自立した生活に影響を与えることがあります。
3. 認知症の方のBPSDへの影響
また、認知症の方の中では、体内時計を調整する機能が低下し睡眠や生活のリズムが乱れる方もおり、そのリズムの乱れが不穏や興奮(夜間に不安感や混乱が増し、徘徊や興奮状態になる夕暮れ症候群等)などのBPSDに影響を与えていると考えられるケースも報告されています。
日常ケアにおけるサーカディアンリズムの活用
1.環境の整備
高齢者がサーカディアンリズムを維持しやすい環境を整えることが推奨されます。
光環境の調整
- 朝は自然光や適切な明るさの照明を浴びる。
- 夜間はブルーライト等に代表される強い光を避け、温かみのある照明を使用する。
温湿度管理
- 季節に応じた室温と湿度の調整を行う。
室温は、夏は高めで冬は低めとなるものの概ね13~29℃の範囲に収まるようにし、寝具の内部は33℃前後になるよう調整することが推奨されています。
また、湿度については、40~60%程度が良いとされる研究があります。※4 ※5 ※6
※4 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠指針 2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
※5 Okamoto-Mizuno K, Mizuno K. Effects of thermal environment on sleep
and circadian rhythm. J Physiol Anthropol. 2012;31(14):2-9.
※6 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column21.html
2. 活動の計画
- 日中の活動量を確保する : 適度な運動(散歩、体操など)を日課に取り入れる。
- 食事のリズムを整える : 毎日同じ時間帯に食事をとることを心掛ける。
3. ライフリズムナビの活用
- 睡眠データや室温、湿度をモニタリングし、生活リズムに基づいた生活改善のためのケアを実施。
4. 生活歴に沿った対応
- 入居者の生活歴や習慣、趣味などの背景に着目してケア内容を提供する。
例)夜間に仕事をしていた。
朝起きてコーヒーを飲むことが習慣だった。 等
ライフリズムナビの活用例
- イベント記録アイコンでサーカディアンリズムを把握
- 実施したケア内容がリズムにどう影響したか振り返る



イベント記録についてはこちらで詳しく説明しています。
睡眠に課題のある方へケアを行う際のチェックポイント
以下のチェックポイントに着目して、ご入居者へのケアを検討してみてはいかがでしょうか?

睡眠環境
- 就寝・起床時間は毎日規則正しいか。
- 夜間に3回以上覚醒することがないか。
- 昼寝の時間が長くないか。
食事
- 朝食・昼食・夕食をほぼ同じ時間にとっているか。
- 睡眠を妨げるカフェインやアルコールの摂取がないか。
活動量
- 日中に適度な運動(散歩、体操など)を行っているか。
- 日中に自然光を浴びているか。
- 日中に静かに過ごしすぎていないか(活動量の低下がないか)。
光環境
- 朝、窓から十分な自然光が入る環境か。
- 就寝前や夜間にブルーライト等に代表される強い光が当たらないようになっているか。
音環境
- 夜間の騒音が睡眠の妨げになっていないか。
温湿度管理
- 季節に応じて室温と湿度を適切に調整しているか。
- 布団や毛布の調整が適切に行われているか。
まとめ
サーカディアンリズムは、高齢者の健康や生活の質に影響を与える可能性があります。適切な環境整備や生活習慣の調整を行うことで、リズムを整えることが期待されます。ライフリズムナビのデータ活用から生活リズムの把握とサーカディアンリズムに着目してケアを行ってみてはいかがでしょうか。