排泄ケア活用編

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このタイガーロールでは、ライフリズムナビを活用したご入居者への排泄ケアに関して説明します。


まずは本書に書かれているステップに沿ってライフリズムナビの活用方法を習得しましょう。センサーから取得したデータを元にご入居者の生活リズムを読み解き、適切なアラート設定を行うことで、スムーズな排泄ケアにお役立ていただけることでしょう。

本章は「過去データ」「詳細データ」の見方をご理解いただいていることを前提に説明を進めていきます。まずは、下記の「データの見方」をご参照ください。

目次

事前確認項目

あらかじめ用意するもの

PCまたはスマートフォン、タブレット

ご施設によっては導入されているセンサーの違いにより、ご使用中の実際の画面表示とは異なる点がございます。あらかじめご了承ください。

STEP1:ご入居者の睡眠・活動のリズムを把握する

ご入居者の「過去データ」を一か月単位で見てみると、下記のデータから、そのご入居者の生活リズムの特徴、傾向が掴めてくるかと思います。

  • 起床、就寝時刻
  • トイレの頻度や時間
  • 夜間就寝時の平均的な心拍・呼吸数

その情報を参考に仮説を立て、下記のようにご利用者様に合わせたケアを考えてみましょう。

  • 定時のトイレ誘導の時間を、夜間離床されることが多い時間に変更してみる
  • 心拍呼吸数の数値変化には排便の予兆があるのでは?と仮説を立て、排泄ケアを実施してみる
  • 体動が続くときには、起き上がりやおむついじりの動きと推測し、訪室して様子を確認をしてみる
  • 今まで自立されていた方でトイレの失敗が見られる…
  • おむつ外しの傾向がある…
  • トイレ誘導への拒否が強くなかなか介入できない…

このように排泄ケアでお悩みのご入居者がいらっしゃる場合、ぜひその方の生活リズムを把握するところから始めてみましょう。

STEP2:アラートの有効活用と設定時の注意点

ご入居者の生活リズムを把握することができたが、他の業務もある中でなかなかタブレットを見ることができない…。
そんな時には、スマホアプリの読み上げ機能で、ご入居者の動きをお知らせする「アラート機能」をご活用ください。

排泄ケアに活用できるアラート一覧

ベッド活動アラート

機能
設定した秒数以上、ベッド上で継続して動きがあった際に通知

活用シーン
「おむつ外しの動作を掴む」、「トイレへの起き上がり動作を掴む」などへの活用

汚染行為やトイレの失敗を未然に防ぐといった、先回りの排泄ケアにご利用いただけます。


離床アラート

機能
ベッドから離床した際に通知

活用シーン
「トイレまでの誘導が必要な方」、「リハパン、パット内の確認が必要な方」、「トイレ時に見守りが必要な方」などへの活用

トイレ誘導や、見守りなどが必要な方へのケアにご利用いただけます。


トイレアラート

※トイレ内設置 人感センサーの機能です

機能
トイレ内の人感センサーが反応した際に通知

活用シーン
「お一人では排泄に失敗してしまう恐れがある方」、「排泄の声掛けに拒否感がある方」などへの活用

ご入居者がトイレに行かれたタイミングに合わせた排泄ケアにご利用いただけます。


長時間トイレアラート

※トイレ内設置 人感センサーの機能です

機能
設定した時間以上、ご入居者がトイレに滞在された際に通知

活用シーン

「トイレ内での下血などの体調変化が懸念される方」、「排泄の失敗によりトイレ内に長時間滞在される方」、「トイレに入られてから●分後に排泄介助の対応が必要な方」などへの活用

排泄時のトラブルによりトイレから長時間出られない方へのケアにご利用いただけます。

アラート設定時の注意点

・不必要なアラートをかけすぎない

何かあったときに知りたいから…といった理由で、全居室に離床や活動アラートなどをむやみに設定するのは注意が必要です。

数分おきにタブレットから「●●様▲▲しました」といったアラート通知が鳴りやまなくなり、アラート通知が業務への大きな負担に繋がる恐れがあります。アラート設定する際は「なぜ●●様にこのアラートを設定するのか」を明確にしておき、また定期的にアラート設定の精査を行いましょう。

STEP3:センサーデータから仮説を立てケアを実施する

STEP1で実際にご入居者のデータを確認できたら、実際にそのデータから仮説を立ててケアを行ってみましょう。
ここでは実際に、ユーザー様がどのデータを見て、どのように排泄ケアに活用しているかをご紹介致します。

事例① おむつ外しをされる方への活用

「睡眠ログ」より睡眠状況を確認

グラフ上、在床中の表示から、ベッド上で体動が見られ眠れていない状態を確認することができます。
この画像の場合、毎日入床後1〜2時間ほど、ベッド上でもぞもぞと体動があり寝付けていないことがわかります。


そこで、就寝ケアの時間を21時からに見直すことにより、夜間の熟睡される時間が増えおむつをいじる行為が少なくなりました

リアルタイムのベッド上の体動を確認

リアルタイムで体動が継続している際は、「おむつ内に排泄があり、気持ち悪くておむつを外そうと動いている」という状況が考えられます。
定時に訪室するだけでなく、ご入居者の状態に合わせて確認することで、汚染行為の防止だけでなく睡眠を妨げないケアにも繋がります。ぜひベッド上での活動にも注目をしてみてください。

STEP2でご紹介した「ベッド活動アラート」をご設定いただくと、ベッド上でしばらく活動が続いたタイミングでアラート通知が入るため、見落とすことなく確認ができます。

事例② 定時の排泄介助が原因で睡眠の妨げとなっている方への活用

「リアルタイム」の心拍呼吸数より浅睡眠のタイミングを掴みケアを実施

人は睡眠状態から覚醒に向かう際、心拍・呼吸数が徐々に上昇する傾向があります。

リアルタイムで、図のような心拍や呼吸数の上昇が見られる際は、中途覚醒の予兆かもしれません。 人によって心拍・呼吸数の平均には差があるため、「過去データ」の「詳細」より、睡眠深度が浅く、かつ心拍・呼吸数が上昇している時の数値を確認してみましょう。

居室一覧画面で眠られている状態がわかります

ご入居者ごとに、覚醒前の数値がどれぐらい上昇するのか把握をすることで、覚醒のタイミングを読み取ることが可能です。

夜間帯にトイレへの声掛けを行った際、拒否が見られる方は、もしかしたら深い睡眠時かもしれません。
覚醒されたタイミングに合わせ、トイレへの声掛けを実施することで、ご本人様の眠りを妨げずに排泄ケアを行うことができます。

ぜひ、夜間帯の心拍呼吸数にも注目をしてみてください。

事例③ 排泄ケアに拒否がある方の尊厳を意識した活用

「睡眠ログ」より離床のリズムを掴む

トレイに人感センサーを取り付けていないご施設でも、『個人詳細画面』ページ「レポート表示」項目内でご覧いただける「睡眠ログ」で、離床のタイミングからトイレの頻度や時間帯の推測が可能です。

例えば、この睡眠ログでは21〜22時1時頃に離床が多くみられ、この時間にトイレに行かれているのではと推測ができます。

このように、ご入居者の詳細データのベッドから離床された記録からトイレのタイミングを探ることができます。気になるご入居者の「詳細データ」を確認してみましょう。

「リアルタイムデータ」よりトイレ人感センサーの反応時に訪室

※トイレ内設置 人感センサーを用いた場合の事例です。

トイレ内に設置した人感センサーの反応により、トイレに入室されたタイミングで訪室することが可能です。
ご入居者の自尊心を傷つけないようトイレのタイミングを把握し、偶然を装った形で訪室をすることで尊厳を守りつつもスムーズなケアに繋がったというご施設の事例がございました。
さらに、STEP2で紹介した「トイレアラート」を設定すると、トイレ入室のタイミングでアラートが発報されるため見落とし防止につながります。

事例④ 自立された方の排泄トラブルを睡眠データを用いて解決

「睡眠ログ」から失禁と睡眠状況の照らし合わせ

あるご施設で、自立されているご入居者が失禁をしてしまった日と、そうでない日の違いを睡眠状況と照らし合わせてみたところ「明け方までよく眠れている日」は失禁が多い傾向がみられた事例がありました。

上図であれば、赤枠で囲われた日には離床がなく失禁の可能性があるかもしれません

その場合には、 ご入居者のこれまでの離床の傾向から「●時頃までに一度も離床していない時は、トイレ誘導の声掛けを実施する」といった、ご入居者の傾向に合わせた対策を講じてみてもいいかもしれません。

また上記の事例のように、排泄トラブルの解決の糸口が睡眠状況に潜んでいるかもしれません。トラブルが解決しない際は、ぜひ睡眠データも確認してみてはいかがでしょうか。

「活動ログ」からトイレ人感センサーの傾向を確認

※トイレ内設置 人感センサーを用いた場合の事例です。

『個人詳細画面』ページ「レポート表示」項目内でご覧いただける「活動ログ」から、夜間帯にトイレへいかれる周期を読み取り、そのタイミングに合わせたトイレ誘導を行うことで、失禁を未然に防いだという事例もありました。

他事例でも同様ですが、一か月単位のデータを確認することで、ご入居者がどのようなタイミングでトイレに行くかが見えてくると思います。
それらの情報を元に個々に合わせたケアを実施することで、失禁などの排泄トラブルを未然に防ぐことが可能です。ご入居者もケアスタッフの皆様もお互いに心地の良いケアを目指し、実践していきましょう!

まとめ

本章では、排泄ケアへのライフリズムナビ活用方法をご紹介しました。

日々行っている排泄ケアに対して、ライフリズムナビで得られる「睡眠の様子」、「トイレの頻度や時間の傾向」、「今お部屋でどう過ごされているのか」などのデータを複合的に活用することで、ご入居者もケアスタッフの皆様も負担の少ない排泄ケアに繋がるかもしれません。

本章を参考に仮設・検証を繰り返し、その方にあった排泄ケアを実現しましょう。

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