この記事は6分で読めます
このタイガーロールでは、睡眠データを医療機関に提供したことで検査に繋がり、疾患が発見され、その後の服薬調整などにより改善が見られた事例をご紹介いたします。
《基本情報》
・性別:男性(94歳)
・現病歴:高血圧・神経因性膀胱・完全右脚ブロック・便秘症・硬膜下血腫・腎不全・心不全
・既往歴:右急性硬膜下血腫
・介護度・認知症度:要介護3/認知症度II b
・ADL:車椅子、立ち上がりも可能
・入居の経緯:元々独居で生活されていたが「一人にしておくと何をするか分からない」とのことで緊急で入居され、平成30年6月からホームでの生活が始まる
経緯
法人全体でライフリズムナビを活用した睡眠改善の取り組みが始まったことをきっかけに、ご入居者の睡眠データを見ていたところ特徴的な睡眠データだったことから、睡眠改善の対象者としてピックアップし取り組みを始めた。
ご入居者の当初の課題
意思疎通が難しく本人が「やりたい」と思うとすぐに行動に移してしまい、衝動を抑えられず転倒などのリスクが高い状況であった。
そのため、日常生活において常に危険が伴い、暴力的な言動や不眠も見られていた。
ご施設では精神疾患のため適切に治療ができる病院への入院が必要だと考えており、職員全体が「施設ではもう生活を見守れないのでは」という意識になっていた。
ライフリズムナビの活用 ― 睡眠および行動の把握
取り組み開始直後の睡眠データ(2025年5月)
取り組みを開始した2025年5月の時点で断眠傾向が見られた。

ライフリズムナビのイベント記録を活用し、ご入居者の普段の様子や行動を記録した。


イベント記録についてはこちらで詳しく説明しています。
ライフリズムナビの活用 ― 睡眠データの分析
外部デイサービス利用などの活動量増加や服薬量の調整に取り組んでいたが、不眠傾向は続いており暴力的な行為も引き続き見られ、状態の改善があまり見られなかった。
取り組みから一ヶ月後の睡眠データ(2025年6月)

ライフリズムナビの活用 ― 医療機関との連携
精神科への受診が決まり、その際に資料とあわせてライフリズムナビの睡眠データを持参した。
受診前の睡眠データ(2025年7月)
一見するとよく眠れているように見えるが、実際は睡眠薬が効き過ぎている状態であった。

精神科の医師が資料や職員の話に加えてライフリズムナビで取得した睡眠データを確認したところ「これは精神の問題だけではないのでは?」とその場でCTスキャンと血液検査を実施、結果として慢性硬膜下血腫、心不全、腎不全が見つかった。
血種が脳を圧迫していたため危険行動や暴力行為が出ていたかもしれないと、状況が分かってきた。
ご入居者の状態の変化
診断後、精神薬を調整した。
《診断前》
- リスペリドン(1日2回、夕食後と就寝前)
- ロラゼパム(1日1回、就寝前)
- デエビゴ(1日1回、就寝前)
《診断後》
- レキサルティ(1日1回、朝食後)
- ロラゼパム(1日1回、就寝前)
- デエビゴ(1日1回、就寝前)
以前は介助しないと食事が食べられなかったが、服薬調整したことで自力で食事を摂取できるようになった。
表情はとても穏やかになり、精神面も安定してきた。
また、睡眠導入剤を飲まなくても就寝できるようになった。
精神科受診後の睡眠データ(2025年8月)
5月の睡眠データと比較すると、長時間眠れた日が増加している。

職員の気持ちの変化
今までは精神疾患だと思い込んでいたが身体的な疾患が見つかり、精神ではなく身体が悪かったと分かったことで、「これからもご入居者をこの施設で見守っていこう!」という意識に切り替わっていった。
データを活用するメリット
ライフリズムナビの睡眠データを医師に提供することで、医師に客観的な事実を伝えることができた。
医師も客観的な睡眠データがあったため「これは通常の精神疾患とは違う」と感じ、検査に繋がった。
ユーザーに向けたアドバイス
医師への説明は職員の主観的な情報だけではなく、客観的なデータを提供することで事実を伝えやすくなります。
医療機関への受診の際はライフリズムナビの睡眠データを持参・提供してみてください。
また、普段からライフリズムナビの睡眠データを見ることで、ご入居者の眠りの癖が見えてきます。
普段の睡眠リズムを知ることで、変化が起きたときに気付くことができます。
まずは眠れている方も含めて睡眠データを確認し、状況を把握することから始めてみてください。
まとめ
この事例では、ライフリズムナビで取得した睡眠データを医療機関に提供したことがきっかけとなり、疾患が発見され適切な処置が行えました。その結果、ご本人の状態に変化が見られただけでなく職員の意識も前向きな気持ちに切り替わっていきました。

ライフリズムナビは、睡眠が客観的なデータとして可視化されているので、医師などに提供することで強力な判断材料の一つになります。
今回の事例を参考に、ライフリズムナビを活用した医療機関との連携にお役立てください。
センサーマットなどから取得した各種データをまとめて表示する、レポート機能も是非ご活用ください。


